解きながらわかる熊野筆
その7 解説

第三章 熊野筆のつくり方

解きながらわかる熊野筆その7

「雑学」その1

【問題56】次のうち、「伝統的工芸品熊野筆」の条件として、正しいものはどれでしょう。 「伝統的工芸品熊野筆」の条件その1

【答え】毛を混ぜるには「練り混ぜ」技法によること

【解説】
伝統的に使用されてきた原材料として次のような規定があります。
1.火のし・毛もみには、「籾殻」の灰を用いること。
2.寸切りには、「寸木」及び「はさみ」を用いること。
3.混毛は、「練り混ぜ」によること。
4.糸締めには、「麻糸」を使用すること。

【問題57】次のうち、「伝統的工芸品熊野筆」の条件として、正しいものはどれでしょう。 「伝統的工芸品熊野筆」の条件その2

【答え】広島県安芸郡熊野町で製造された筆以外は「伝統的工芸品熊野筆」を名乗れない

【解説】
製造される地域として「広島県安芸郡熊野町」と規定されています。

【問題58】次のうち、「伝統的工芸品熊野筆」の条件として、正しいものはどれでしょう。 「伝統的工芸品熊野筆」の条件その3

【答え】軸の材料は、竹又は木とすること

【解説】
伝統的に使用されてきた原材料として次のような規定があります。
1.穂首は、ヤギ、ウマ、シカ、タヌキ、イタチ若しくはネコの毛又はこれらと同等の材質を有する獣毛とすること。
2.軸の素材は、竹又は木とすること。

【問題59】熊野筆の材料で、熊野町で産出しているものはなんでしょう。

【答え】熊野町では材料は産出されていない

【解説】
穂首の材料は、主に動物の毛ですが、これには馬、鹿、山羊、たぬき、いたち、猫などがあります。
しかし、熊野町にはこの材料がありません。
日本でとれる動物の毛は、馬や狸などほんの少しはありますが、そのほとんどを中国をはじめ、北米(カナダ)などから、熊野筆事業協同組合や町内の会社が入手しています。
軸の材料は主に竹や木ですが、これも熊野町にはなく、大部分が岡山県や島根県、兵庫県から町内の会社が買ったり、中国、台湾、韓国など外国から入手しています。

【問題60】筆の穂先の、最も大切とされる毛はなんと呼ばれているでしょう。

【答え】命毛

【解説】
野口雨情作詞の「筆まつり」でも、次のように歌われており、命毛は、筆の最も重要な部分とされています。
人にかくして サッコリャサ
書くたよりさえ ハ、エッサカセ
筆の命毛にはかくされぬ ソリャ
筆の命毛には ハ、ヤントナ
かくされぬ

【問題61】胎毛筆とはなんでしょう。

【答え】赤ちゃんの産毛で作った筆

【解説】
胎毛とは、赤ちゃんがお母さんのお腹にいる頃(5 ヶ月目頃)からはえる毛で、とてもやわらかく、しなやかな毛です。
この胎毛の先端は、だんだん細く、自然に尖った毛先になっています。このように柔らかい、自然な毛先の頭髪(新毛)は生まれてきた時のままの毛先を持っており、こうした生後初めて切った赤ん坊の頭髪で作った筆を胎毛筆と呼び、誕生記念などにします。

【問題62】筆づくりには様々な材料を使います。 さて、「玉毛筆」とはなんの毛で作られた筆でしょう。

【答え】猫の毛で作った筆

【解説】
猫の背中の毛を使います。毛先が丸く膨らんでいるので玉毛とも言います。
玉毛は狸毛やイタチ毛に比べるとやや柔らかく、弾力と粘りがあり、紙によく密着して切っ先がよく回るので玉毛筆は理想的な仮名(かな)筆と言えます。

【問題63】左の写真は、ある鳥の羽を使用して作った特殊な筆です。これは、なんという鳥の羽から作られた筆でしょう。

【答え】ホロホロ鳥の羽で作った筆

【解説】
草や竹、鶏や孔雀や軍鶏など鳥の羽、またマングースやムジナや豹などの変わった動物の毛などで作られた筆もあります。通常の筆と比べて思いもよらない書き味で、面白い線が描けるために珍重されています。写真の筆もその一つでホロホロ鳥というアフリカなどに生息する鳥のカラフルな羽毛を使って作られています。

【問題64】太筆によく使われる、「天尾(あまお)」とは、何の尾の毛をいうでしょう。

【答え】ウマ

【解説】
馬の毛は、胴、たてがみ、脚、尾など、筆づくりでは全身の毛が使われます。特に尾の根元の方の毛を天尾(あまお)といい、弾力と張りがあるため大筆や太筆によく使われます。世界一の大筆にも馬の尾の毛が使われています。