代々続く筆司の家系で
次世代へ何をどう繋いでいくか

熊野筆伝統工芸士實森得全

代々続く筆司の家系で

次世代へ何をどう繋いでいくか

Sanemori Tokuzen

實森 得全

伝統工芸士認定年月日:2000年2月25日

實森得全

得全の今

「筆の良さは、使ってみないとわかりません。まずは使ってみて、自分に合った筆を選んでほしいですね」と話す得全氏。原料の毛が徐々に手に入りにくくなってきた20年くらい前から、選毛や毛組により工夫を凝らして、その筆本来の書き味を再現するようになりました。ゴルフから魚釣り、野球、ソフトボールまでこなす多趣味で凝り性な性格が、筆作りにも生きています。

實森得全
實森得全

父からは「筆司が書道をすると自分好みの筆を作ってしまう」といわれ、使う人に寄り添った筆作りを心がけてきました。細筆から超特大筆までどんなサイズの筆も作りますが、大きな筆は作れる筆司が限られるため、発注がよく入ります。伝統工芸士会の会長としてメディアに出演する機会も多く、PRにも尽力しています。

※選毛(せんもう):原毛から筆に使える良質な毛を選び取る作業

※毛組(けぐみ):選毛で選んだ毛を、量を決めて組み合わせていく作業

得全の過去

祖父の代から続く筆工房の家に生まれた得全氏。小学生の得全氏を膝に抱いていた祖父が倒れてしばらくして亡くなった時、家業を継ぐのが運命だと感じ、将来筆を作ろうと決めました。筆司になることは意識していましたが、物づくりが好きで高校の機械科を卒業し、大手自動車メーカーに就職。エンジン開発に携わり、一部の工程で改善提案をするなど勤務時代にも妥協せず物づくりに取り組みました。

實森得全
實森得全

3年ほどで退職して筆司の道に。父の先代得全は「見て習え」という姿勢で、間違っている時だけ注意を受け、手探りで仕事を身につけたといいます。当時は1軒の家から伝統工芸士は1人という慣例があり、父が亡くなった2年後に伝統工芸士の認定を受けました。

得全の未来

得全氏の息子は大学卒業後すぐに筆司となり、慣例も変わってきたことから既に伝統工芸士の認定を受け活躍しています。「どんな挑戦をしていくのか楽しみです。私と考え方が違う部分もありますが、息子には自由に挑戦してほしい。父を見習い、できるだけ口出しせず見守っていきたい」と期待を込めます。

實森得全
實森得全

筆作りの伝統を守るには、使う人を増やしていくことも大切。多くの人に書道に興味をもってもらえるよう、子どもの頃から筆に親しむ機会を増やす草の根の活動が必要だと考えています。筆作り体験に来た子どもたちは作った筆を「宝物にする」「使わずに飾っておく」といいますが、「筆は書く道具です。使って初めて真価がわかるものなので、ぜひ使ってほしい」と呼びかけています。

熊野筆 伝統工芸士

實森 得全

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